つみたてNISAでよく投資先として選ばれているS&P500や全世界株。これら外国資産の投資をしている投資信託は為替の影響を大きく受けるのはご存じですか?S&P500などの指数に投資をしているインデックス運用は、主に投資先の株価に影響を受けます。ただ日本人が外国に投資をしている場合はそれに加えて為替変動の影響が同じくらい重要になります。
この記事では為替が外国資産に及ぼす影響や1円の円高がどれくらいの値動きになるのかまだ詳細に見ていきたいと思います。
円安や円高の意味
1ドル=100円のように外国通貨と自国通貨の交換し合える基準価格のことを為替レートと言います。2025年5月現在、日本とアメリカの為替レートは約145円です。海外旅行や出張などで外国に行ったことがある方は、おそらく多くの方がこの為替レートをもとに現地の通貨に交換したかと思います。
為替レートが変動することで用いられる円高や円安ですが、「円の価値が高い(高くなる)」ことを円高、「円の価値が低い(低くなる)」ことを円安といいます。1円が外国通貨でいくらになるかと考え、高くなれば円高、安くなれば円高です。
だいたい日本では1ドル=○○円といった表記をされますが、例えば1ドル150円から1ドル140円になった場合は「円高」になったといいます。ここが感覚と逆になるかもしれませんが、1円の価値としては高くなっているので円高です。
為替レートが変動する要因
為替レートが変動する要因は様々あり、複雑に絡み合っています。円高になった要因を1つに絞ることはできませんが、ひとくくりで言ってしまうならば、「通貨に対する需要と供給のバランス」で為替は変動します。日本円の需要が上がれば円の価値が高まり円高となります。また、日本銀行が沢山お金を刷って円の供給が増えると円の価値が下がり円安となります。通貨の需要が変動する要因は次のようなものがあります。
1. 両国の金利差
金利差による為替レートの変動は「金利平価説」と呼ばれており、変動の大きな要因です。
今の日本では普通預金の金利が多くの金融機関で0.2%です。これは100万円を1年間銀行に預けておくと1,000円の金利が付くということです。銀行の金利はほとんど付かないというイメージがありますよね。
そんな中、アメリカの金利が3%や4%だったらどうでしょうか。同じ100万円でも1年間でアメリカでは3万、4万の金利を得ることができるという訳です。
この場合は、通貨を円からドルに変えてアメリカの金利で運用する人が増えます。ドルの需要が増えるため、ドル高円安へと動きます。
2. 物価の変動
物価の変動も為替レートに影響します。これは主に輸入や輸出に関係します。企業は商品の材料などを国内や国外から仕入れています。例えば、国産のお肉を提供する日本の焼き肉店を例にします。
もし日本で鳥インフルエンザが流行し、鶏肉の価格が高騰したとします。そうするとコストがかさんで利益が圧迫されるので、より安いお肉を探します。そこでアメリカのお肉がコスト面でメリットがあるとすると、アメリカのお肉を輸入して提供するようになるかもしれません。
その場合、アメリカのお肉はドルで支払わなければいけないので、ドルの需要が高まることになります。つまり円安ドル高に進むわけです。
この例のように、インフレが起きている国の方が通貨安になる傾向があります。
日本の物価が安い時は海外からの旅行客や、日本の輸出が増え、円の需要が高まることで円高ドル安になります。
3. 貿易収支
貿易収支は、(日本からの輸出額)-(日本の輸入額)で求められます。
貿易収支が黒字、つまり日本からの輸出が輸入を上回っている場合は円高になります。日本が海外に輸出をした際は、その代金として他国の通貨から円に交換して支払われるからです。円の需要が高まるということです。
逆に貿易赤字=輸入が輸出を上回っている場合は円安に向かっていきます。
先ほどの鶏肉の例のように1つの企業単体で見ると為替レートへの影響は小さいですが、このように国全体の輸出や輸入になると為替レートへの影響は大きくなります。
1円の円高は海外資産にどれくらい影響が出る?
さて、本題ですが1円の円高によってS&P500など海外の資産はどれくらい変化するでしょうか。前提として円高になると海外の資産額は減少してしまいます。S&P500など海外に投資をしているということはドルで資産を保有していることと同じになるのでドルから円に変換するということを考えると1ドル=150円より1ドル100円の方が資産が少なくなります。
1円といっても、もともとの為替レートによって影響は異なる
1円の円高といっても1ドル=151円から150円になる円高と1ドル=101円から100円になる円高はその影響が異なります。例えば1ドル=2円から1円になると資産が半分になったことになりますよね。このように元々の為替レートによって1円の円高による影響は異なります。
何%円高になったかで考える
円高の影響を計算するにあたっては「何%円高になったのか」で考える必要があります。そして、その数字がそのまま資産の減少率となります。例えば150円から149円へ動くとすると149÷150を計算し、約0.993となります。1-0.993=0.006なので約0.6%の資産減少になるわけです。100万円を投資している人にとって150円から149円へ円高になると6,000円の損失(100万×0.6%)になるということです。
1円の円高でも決して影響は小さくありません。金融政策決定会合など経済イベントの後は為替に影響が出やすく、1日で3円以上為替が動くこともあります。例えば1ドル=150円から147円になると2%の資産減少になります。このように、円高による資産減少の影響を見るにはもともとの為替レートから何%円高になったかという考え方で計算します。
為替相場を見て投資のタイミングを決めるべきか
外国資産に大きく影響を及ぼす為替ですが、実際にNISAなどで投資をする場合は為替相場を見てタイミングを図るべきでしょうか。結論、つみたてNISAを始める上ではそこまで気にする必要はないと考えます。つみたてNISAのドルコスト平均法は為替に対しても効果をはっきするのでリスク軽減効果が働いています。
一括で外国資産に投資をする場合は為替の動きも気にした方がいいでしょう。為替相場については上がったり下がったりを繰り返し予測ができないですが、ここ数年のドル円相場は140円~160円の間を行ったり来たりしています。その意味では160円近くのタイミングで海外資産に一括投資をすることは少し危険だとも言えます。その時のトレンドにもよりますが、為替はある程度の傾向もつかめるので見通しを立てた上で判断しましょう。
まとめ
今回は為替レートの動きがNISAで運用している外国資産に及ぼす影響を見ていきました。為替レートは外国資産に直接影響を及ぼす重要な指標になりますので、リスクをしっかり理解した上で投資を行いましょう。