子ども1人にかかる教育費はいくら?大学卒業までの総額と今からできる備え

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1. はじめに:教育費はいつからどれだけかかるのか?

「子どもを1人育てるにはいくらかかるのか?」 これは多くのご家庭にとって切実な疑問です。特に、これから子どもを持とうとしているご夫婦にとっては、人生設計に直結する重要なテーマと言えるでしょう。

中でも教育費は、住宅費・生活費と並んで家計に与えるインパクトが大きく、一度に支払う金額も大きいため、しっかりと準備しておくことが求められます。

さらに、教育費は「どの学校に通うか」「進路をどう選ぶか」によって大きく変動します。公立と私立では年間数十万円〜100万円以上の差が生じることも。

この記事では、子どもが大学を卒業するまでにかかる教育費の全体像を明らかにし、年齢別・進学ルート別にかかる費用を分かりやすく解説します。そのうえで、今からできる備えや足りなくなった場合の対処法についても紹介します。


2. 教育費の全体像:子ども1人にかかる総額はいくら?

2-1. 公立だけに通った場合の総額

文部科学省が公表している「子供の学習費調査」や「学生納付金調査」によると、すべて公立の学校に通った場合、子ども1人あたりにかかる教育費の総額は約1,000万円前後とされています。

具体的には、以下のような内訳になります:

  • 幼稚園(公立):約60万円(2年間)
  • 小学校(公立):約193万円(6年間)
  • 中学校(公立):約146万円(3年間)
  • 高校(公立):約135万円(3年間)
  • 大学(国公立・自宅通学):約500万円(授業料・入学金・生活費含む)

合計すると約1,034万円となり、これが最も費用を抑えたルートと言えます。

2-2. 私立に通った場合の総額(パターン別)

一方で、すべて私立に通った場合の教育費は約2,500万円にものぼります。

  • 私立幼稚園:約100万円(2年間)
  • 私立小学校:約960万円(6年間)
  • 私立中学校:約420万円(3年間)
  • 私立高校:約300万円(3年間)
  • 私立大学(文系・自宅外):約800〜1,000万円(授業料+仕送り)

進学パターンごとの概算は以下の通りです:

パターン教育費総額(概算)
幼稚園〜大学まで全て公立約1,000万円
高校から私立に進学約1,400万円
中学・高校が私立約1,700万円
小〜高校が私立、大学も私立約2,300万円
幼稚園〜大学まですべて私立約2,500万円

2-3. 最新データに基づく教育費シミュレーション

実際の家庭では、すべて私立に通うケースは少ないかもしれません。そこで、現実的な例として、以下のようなシミュレーションをしてみましょう。

例1:中学・高校のみ私立、大学は私立文系・自宅通学

  • 幼稚園・小学校(公立):約250万円
  • 中学・高校(私立):約720万円
  • 大学(私立文系):約550万円
  • 合計:約1,520万円

例2:小学校から高校まで私立、大学は私立理系・自宅外

  • 幼稚園(公立):約60万円
  • 小〜高校(私立):約1,600万円
  • 大学(私立理系):約950万円
  • 合計:約2,610万円

3. 年齢別・学校段階別にかかる教育費の内訳

3-1. 幼稚園・保育園にかかる費用

保育料は自治体や世帯年収によって異なりますが、保育園や認定こども園に通う場合の月額は平均2〜3万円、年間で30万円前後です。

私立幼稚園では保育料に加え、施設費・教材費・行事費などが追加され、年間約50万円〜60万円ほどかかることもあります。

3-2. 小学校でかかる費用

  • 公立小学校では給食費・学用品・教材費などで年間32万円ほど
  • 私立では授業料だけで年間90万円以上、その他含めて年間160万円近く
  • 習い事や学童保育など、課外活動にかかる費用も月1万〜3万円が相場

3-3. 中学校・高校でかかる費用

  • 公立中学校:約48万円/年(給食・部活・修学旅行など)
  • 私立中学校:約140万円/年(授業料・施設費・教材費など)
  • 高校も同様に、公立は約50万円/年、私立は100万円〜150万円/年
  • この時期から塾代が急増し、年間30万〜60万円が一般的

3-4. 大学でかかる費用

  • 国公立大学:授業料+入学金で年間約70万円、自宅通学でも生活費含め約120万円/年
  • 私立文系大学:約110万円/年、理系では約150万円/年
  • 自宅外通学の場合、仕送り・家賃・生活費で+年間100〜150万円

大学4年間の総費用は、自宅通学で約500万円、自宅外で約700〜900万円にのぼります。


4. 公立と私立の教育費比較:どれだけ差がある?

教育費における公立と私立の差は極めて大きく、通学する学校によって年間数十万〜100万円以上の差が出ます。

以下の表は各段階での年間費用の平均をまとめたものです:

学校段階公立平均(年)私立平均(年)
幼稚園約23万円約50万円
小学校約32万円約160万円
中学校約48万円約140万円
高校約50万円約100万円以上
大学約120万円約150〜200万円

5. 教育費を準備するための具体的な方法

5-1. 児童手当や高校無償化制度の活用

まずは国の制度をフル活用しましょう。児童手当は2024年から所得制限が撤廃され所得に関わらず満額がもらえるようになりました。また、高校生世代まで手当が受けられるように拡充し、お子様のいる家庭の負担が減るよう改正されています。

また、2025年から公立高校の授業料も実質無料となりました。就学支援金制度も利用することで、私立高校に通わせる場合でも年間10万〜40万円ほど補助を受けることができます。

5-2. 学資保険・積立投資などでの資金準備

学資保険は子どもの入学時期に合わせて給付金が出るように設計されており、計画的な貯蓄に向いています。返戻率が100%以上の商品を選べば、預金よりも効率的な貯蓄が可能です。

さらに、つみたてNISAなどを活用して、時間を味方につけた積立投資も効果的。毎月1万〜3万円の積立でも、15〜18年後には大きな教育資金となるでしょう。

5-3. 教育費の目標金額と毎月の積立額の目安

仮に1,500万円を18年で準備する場合、月あたりの積立額は約69,000円です。児童手当を教育資金として活用することで、この金額を軽減することも可能です。

6. 教育費が足りなくなったときの対処法

どれだけ準備していても、教育費が予想以上にかかる場合があります。そんなときのために、いくつかの選択肢と対応策を知っておくことが大切です。

6-1. 教育ローンの活用

文部科学省所管の「日本政策金融公庫」や各金融機関では、教育ローンを提供しています。金利が比較的低く、必要なときにまとまった金額を借りることが可能です。

  • 日本政策金融公庫の「教育一般貸付」は、年3.15%(固定金利)※令和7年5月現在
  • 借入限度額:子ども1人につき350万円まで
  • 返済期間:20年以内(元金据置可能)

6-2. 奨学金制度の利用

日本学生支援機構(JASSO)などが提供する奨学金制度は、返済義務のある「貸与型」と返済不要の「給付型」があります。

  • 第1種(無利子)・第2種(有利子)の貸与型
  • 所得基準を満たせば、月3万円〜12万円程度を受給可能
  • 給付型は家族構成等による年収要件あり

奨学金は在学中から申し込むだけでなく、進学前から予約申し込みもできます。条件や返済負担を考慮して、計画的に利用することが大切です。

6-3. 家族や祖父母からのサポート

祖父母からの教育資金贈与も、有効な対策の一つです。一定の条件を満たせば、「教育資金の一括贈与非課税制度」により最大1,500万円まで非課税で贈与を受けられます(2026年3月末までの時限措置、以降延長可能性あり)。


7. シミュレーション付きで自分の家庭の教育費を試算

ここまでの内容を踏まえ、実際に自分の家庭ではどれだけ教育費が必要かをシミュレーションしてみましょう。

7-1. 家族構成と進路パターンを想定する

まずは以下の3つのポイントを明確にしておきましょう:

  • 子どもの人数(ここでは1人)
  • 通学形態(公立中心か私立希望か)
  • 大学進学先(国公立か私立/自宅か自宅外)

7-2. シミュレーション例

パターンA:全て公立+国公立大学・自宅通学

  • 総額:約1,000万円
  • 年間平均:約55万円(18年間)
  • 月の積立目安:4.5万円(児童手当含まず)

パターンB:中高私立+私立文系大学・自宅外通学

  • 総額:約2,000万円
  • 年間平均:約110万円
  • 月の積立目安:約9万円〜10万円

7-3. 無理のない積立計画を立てる

実際に試算してみると、「こんなにかかるのか」と驚くかもしれません。しかし、すべてを一度に準備する必要はなく、段階的に積立・制度活用・奨学金などを組み合わせることで、十分に備えることが可能です。


8. まとめと備えの重要性

子ども1人を大学卒業まで育てるには、少なく見積もっても約1,000万円、多ければ2,500万円以上の教育費が必要です。

特に私立に進学する場合は、費用が大きく膨らむため、早めに準備を始めることが重要です。

  • 教育費は「進学ルートによって大きく異なる」
  • 「年齢別・段階別」に計画的に貯めることが成功のカギ
  • 制度・奨学金・家族の支援など、利用できるものを最大限活用

将来、「教育費が足りない」と焦ることのないように、今日から少しずつ準備を進めましょう。家族で話し合い、無理のないプランで備えることが、子どもの未来への安心につながります。