「会社員ではなく、自分の力で何かに挑戦したい」「子供が好きなので子供と関わる仕事がしたい」「人に何か教えることが得意なので仕事にできないかな」
このように考えている方々にとっては、学習塾の起業が1つの選択肢になるかもしれません。
私自身25歳で会社員を辞め、学習塾の立ち上げで独立しました。以下が私のプロフィールです。
・新卒で地元の大手地方銀行の入社
・銀行員時代に証券アナリストやFP2級などの資格取得
・「子供の未来に携わる仕事がしたい」との思いで会社を退職し、学習塾設立
この記事では、私の経験をもとに学習塾立ち上げに至るまでの準備やステップ、成功のコツなどを紹介させていただきます。学習塾経営を考えている方にとって、最初の一歩を踏み出すための一助になっていただければ幸いです。
1. はじめに

1-1. 学習塾の起業に注目が集まる背景
近年、「学習塾を自分で始めたい」という方が増えています。その背景には、少子化にもかかわらず教育熱が高まっていること、そしてフランチャイズなどの選択肢が広がり、比較的低コストでの起業が可能になったことがあります。
また、少子化が進んでいることの裏返しで、1人の子供にかけられる教育費が大きくなっていることも背景にあります。
特に教育業界での経験がある方や、「子どもが好き」「地域に貢献したい」という想いを持つ方にとって、学習塾の起業は魅力的な選択肢となっています。
1-2. 本記事の目的と読み進めるメリット
この記事では、学習塾の起業を検討している方に向けて、開業までのステップ、メリット・デメリット、注意点、成功のためのコツなどを網羅的に解説します。最後まで読むことで、塾起業の全体像が掴め、次に何をすべきかが明確になります。
2. 学習塾を起業するメリット・デメリット
2-1. 学習塾を起業する5つのメリット
学習塾を起業するメリットを簡単に5つご紹介します。
- 地域に貢献できる仕事
地域の子どもたちの学力向上に直接関わることができ、社会的なやりがいを感じられます。 - 自分の教育理念を形にできる
カリキュラムや指導方法、教室の雰囲気など、すべてを自分の裁量で決められます。 - 初期投資が比較的少ない
飲食業などと比べて設備投資が少なく、開業資金を抑えやすいのも特徴です。大きなもので教室の物件取得費、机や椅子などの備品等です。 - 継続的な需要がある
教育は景気に左右されにくく、長期的なニーズが期待できます。また、1度入塾してもらうと卒業まで継続するケースが多く比較的安定的な収益も見込めます。 - 成功すれば高収益も見込める
信頼と実績を積み重ねることで、高単価の授業料や口コミ集客が可能になります。
2-2. 学習塾を起業する4つのデメリット
学習塾経営におけるデメリットも確認しておきましょう。
- 集客の難しさ
新規開業時は認知度が低く、競合も多いため、生徒集めが最大の壁になります。 - 収益が安定するまで時間がかかる
最初の半年~1年は赤字を覚悟する必要があり、資金計画が重要です。 - 保護者対応など精神的負担
教育に熱心な保護者との対応は丁寧さが求められ、時にストレスにもなります。 - 教育以外の業務も多い
授業だけでなく、経理、集客、契約書作成など、さまざまな業務をこなす必要があります。
3. 学習塾起業までのステップ【全体像】
3-1. ステップ一覧:計画〜開業〜運営
- 事業計画の策定
- ターゲットや指導内容の決定
- 開業資金の準備
- 物件の選定
- 法人設立 or 個人事業の登録
- 教材やシステムの整備
- 集客活動の実施
- 開業・運営開始
3-2. 必要な準備期間の目安
一般的には、構想から開業までに3~6か月程度かかるケースが多いです。物件の契約や資金調達に時間がかかることもあるため、余裕をもった計画が重要です。
4. ステップ別:学習塾起業の具体的手順
4-1. 事業計画の策定

まずは「どんな塾にしたいか」を明確にしましょう。以下のような項目を洗い出しておくとよいです。
- 対象学年(小学生/中学生など)
- 指導方針(個別指導/集団授業/オンライン併用など)
- 授業料設定
- 月間の売上・費用シミュレーション
指導方針についてはオンラインと対面のハイブリッド形式や個別と集団が選択できるようなものにしてもいいかもしれません。また、授業料設定については親御さんが他塾と比較をする上でも重要な部分になるので、近隣の塾の授業料などもリサーチしつつ適切な料金設定を行いましょう。
4-2. 場所・物件の選定
塾の立地は非常に重要です。目安としては以下のような条件を検討しましょう。
- 駅から徒歩圏内
- 小中学校の近く
- 学習塾が集中する地域(教育ニーズが高い)
- 家賃が適正範囲内
自宅を活用するケースもありますが、看板設置や防音対策などの課題も考慮が必要です。賃貸の場合は、オーナーに許可を得る必要もあります。
立ち上げ初期の頃は近隣への認知を広げることが非常に重要です。その意味では、大きな道路沿いにあることや人通りの多い住宅街付近などにすることも重要です。
また、テナントを選ぶ際は事務所仕様orスケルトン物件にするかどうかもポイントです。事務所仕様であれば多少の内装工事は必要かもしれませんが、初期費用を大きく抑えることができます。スケルトン物件であればまっさらな状態から自分が好きなように内装をデザインすることができますが、その分費用がかさんでしまいます。
4-3. 開業形態の選択(個人事業主 vs 法人)
個人事業主は手軽で税務も簡単ですが、信用面では法人に劣る場合もあります。開業における
法人(株式会社・合同会社など)は社会的信頼性が高く、助成金・補助金の対象になる場合があります。ただし、法人設立には登記費用などがかかるため注意しましょう。
まずは個人事業でスタートし、軌道に乗ってから法人化するケースも一般的です。
税制面で言うと、一般的に売上1000万円までであれば個人事業主、1000万円を超えてくると法人にした方がメリットが出てくると言われます。厳密には経費を引いた利益の部分で税金は決定します。
4-4. 必要な届出・許認可
学習塾は資格や免許が不要なため、次のような手続きでスタートできます。
- 税務署への開業届提出(個人事業主の場合)
- 青色申告承認申請書の提出(節税メリットあり)
- 法人の場合は登記手続きが必要
4-5. 教材・カリキュラムの準備
自作教材、市販教材、フランチャイズ提供教材などがあります。
- 自作教材:独自性が出せるが、作成コストや時間がかかる
- 市販教材:安価でスタートしやすい
- フランチャイズ:システム一式が提供される反面、自由度が制限される
ICT教材やAI学習支援の導入も検討すると、他塾との差別化につながります。
4-6. 集客・広告戦略
最も重要なのは開業前からの集客準備です。
- チラシのポスティング
- Web広告(Google、Instagram、Xなど)
- 教育系ポータルサイトへの掲載
- オープン前の体験会・説明会の実施
ひと昔前までは初期の集客として学校前でのチラシ配りやポスティングが主流でしたが、現在はSNSなどネット集客の重要さが増してきています。もちろん、チラシ配りなども効果がないことはないですがヒット率はかなり低いです。
今の時代は、まず気になったらホームページで確認してみるという方がほとんどではないでしょうか。その意味で、ホームページ(できればSNSも)を用意しておくことは必須と言えます。
ホームページの作成については私の場合、ワードプレスを使って自分で作成しました。全くの初心者でしたが、ネットで少し勉強すれば使えるようになったので他の企業に外注する必要はありません。ホームページの作成を外注すると軽く100万円を超えてきます。まずは、簡単な内容だけ(授業形式や月謝など)でいいので自分で作ってみることをおすすめします。軌道に乗ってきて、塾の規模も大きくなってきた時に、外注を検討すれば良いと思います。
また、「無料体験授業」や「友達紹介キャンペーン」は効果的な集客手段です。学習塾は特に口コミや紹介による入塾が大きな割合を占めます。貴重な生徒1人からどれだけ広げていけるかが勝負どころにもなりますので、口コミが広がる仕組みづくりにも注力しましょう。
4-7. 開業後の運営と改善
運営開始後は、以下のような視点で改善を重ねていきましょう。
- 生徒・保護者からの意見をヒアリング
- 定期テスト結果の分析と指導改善
- 他塾の動向を常にチェックして差別化を図る
保護者の方から塾に対して、前向きなコメントを頂いた時はグーグルなどで口コミの掲載をお願いしてみましょう。塾の信頼度も上がりますし、グーグルマップ上で上位表示されるMEO対策にも繋がります。
また、初めの段階では保護者の意見によく耳を傾け、柔軟に対応できるようにすることが大事です。個人でやる場合は、その柔軟性が大手塾との差別化にもなります。
5. 学習塾経営で成功するためのポイント
5-1. リピーター(継続生)を増やす工夫
成績向上や学習習慣の定着など、具体的な成果を見せることで満足度と継続率が上がります。成果は看板にのせるだけでなく、ホームページやグーグルのプロフィール、SNSなどあらゆる場所に掲載しましょう。
また、口コミを広げる工夫も大切です。紹介キャンペーンなどを通して、1人の生徒から複数の生徒を獲得する仕組みづくりをしましょう。
5-2. 地域との信頼関係を築く方法
地元の学校やPTAと関係性を築くことで、信頼が広がり紹介にもつながります。学校にチラシを置いてもらうようなことはできませんが、学校からの理解を得ることはとても重要です。
5-3. 保護者との丁寧なコミュニケーション
月1回の報告書や定期的な面談で信頼関係を築きましょう。定期的な面談をすることで、保護者の満足度を高められるだけでなく、生徒の心の変化などを理解することにも繋がります。
5-4. 差別化ポイントの明確化
「英検対策に強い」「不登校対応」「高校受験特化」など、強みを打ち出すことで選ばれる塾になります。特に英語に対する重要度は私立学校を中心に増してきています。また、不登校生徒の割合もかなり上昇しており、需要が今後伸びる分野かもしれません。
6. 学習塾起業に必要な知識・資質とは
学習塾経営に特別な資格(教員免許など)は必要ありません。子供の未来を背負う責任感が強くあれば、学習塾経営で成功するチャンスはあると思います。その上で大事な点としては、
- 教育への熱意と継続力
- 経営視点(数字・顧客・改善)
- 人を育てる姿勢と聞く力
- 地域に根ざす意識
特に子供は心の成長期でもあり、なかなかやる気がでない期間が続いたり、反抗期で話を聞かなかったりすることもあるでしょう。そんな状況でも子どもがいつか変わることを信じて粘り強く指導を続ける忍耐力も必要かと思います。
また、積極的に地域と関わる行動力も必要です。子ども食堂や地域のボランティアなどに積極的に参加し、地域との交流を深めていきましょう。
7. フランチャイズか独立開業か?それぞれの特徴
7-1. フランチャイズ開業の特徴
- 開業支援や教材提供あり
- ブランド力で集客しやすい
- ロイヤリティや契約制限あり
フランチャイズ開業では、大手塾の看板を借りられることで圧倒的に集客が強くなります。その反面、膨大な加盟金がかかるケースが多く、潤沢な自己資金を用意している方でないとかなり難しいです。また多くの場合で、毎月の売上の一部などにロイヤリティが発生し、利益率が悪くなります。
7-2. 独立開業の特徴
- 自由度が高く理念を反映しやすい
- 自力での集客・教材準備が必要
- 費用が比較的安く済む
独立開業では、フランチャイズ開業とは反対で、初期費用を大きく抑えることができます。
8. よくある失敗とその回避策
- 集客に失敗:マーケティングの知識不足が原因。開業前からの準備が鍵
- コスト過多で資金ショート:設備・人件費の計画見直しを
- 保護者対応に疲弊:対応マニュアルや第三者の相談窓口を用意する
- 経営者視点が弱い:数字の管理(売上・利益)を怠らない
9. まとめ:学習塾起業を成功させるために
9-1. 本記事の要点振り返り
- 学習塾起業には明確な計画と実行力が必要
- メリット・デメリットを正しく理解することが重要
- 開業後も改善を続けることで安定経営へとつながる
9-2. 起業前にやるべきチェックリスト
☑ 事業計画は明確に立てたか?
☑ 開業資金は十分か?
☑ ターゲットと立地はマッチしているか?
☑ 集客準備は開業前にできているか?
☑ 教育に対する熱意は持続できそうか?